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 春の突風は予想だにしない出来事を引き起こす。 「待ってッ!!」  サークルのお花見の場所取りでやって来た桜の名所で、私は優雅さとは程遠いランニングをしていた。飛んでいくレジャーシート。1枚目は鞄で押さえていたのにタイミングが悪かった。  謎の裸のオブジェに引っ掛かったシートを回収して元の場所に戻ると既に出来上がっている中年男性五人が私のシートの上で宴を始めていた。 「なんやネェちゃん。ここはワシらが場所取りしとったで」 「そんな! そのシートは! それに私の鞄だってーーあ」  私の鞄は桜の木の下に移動されていた。どうしよう。おじさんたちが使っているシートは大事なサークルの備品なのに。  そんなとき、隣のシートで場所取りをしていた端正な顔立ちのイケメンがやって来た。 「俺、見てましたよ。先に居たのはお姉さんの方です。酔ってるからといってやって良いことと悪いことはありますよ」 「なんや兄ちゃん。言いがかりか?」 「俺は事実を言ってるだけです」  お花見に相応しくない険悪な雰囲気が立ち込める。こんなときこそ私の出番だ。私は鞄からカラフルなボーリングのピンのようなものーークラブを取り出して空中に放り投げていく。 「さぁさぁ皆様、ご覧ください」  一本  二本  三本  そして四本  巧みに手で操りながらジャグリングを披露していく。これでも私はジャグリングサークル主将なのだ。 「おぉ!」 「すごい!」 「やるなネェちゃん」  くるっと回って後ろ手でクラブをキャッチすると怒っていた人達も皆鎮まり、辺りは忽ち観客の歓声で包まれた。 *  反省したおじさま方に謝られたので、サークルのお花見の開始時間まで1枚目のシートは貸してあげることにした。お詫びに私達にお団子とノンアルのお酒を分けてくれるらしい。今は2枚目のシートの上、一人ちびちびと桜を愛でていた。  そのとき、春風が隣のシートから帽子を運んできた。さっきのお兄さんのものらしい。飛びましたよと帽子を返すと躊躇いがちに座っている距離を詰めて来た。 「あの、待ってる間少しお話しませんか?」  春はすぐそこ。 ーーおわり
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