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「初音が高校生の時、一度だけ会いに来てくれました。私はとっさに初音を追い返しました。誠にあまりにも似ていたから……誠にそっくりな初音の存在が親戚に知れたら……誠との約束は果たすこちが出来なくなります。すぐにでも担ぎ出されて自由を奪われて伊地知家に縛られることになるでしょうから……だから追い返したんです。今回の合併の話が無ければ一生、会うことも叶わなかったことでしょう……。もう、伊地知家は終わり。私も……自由に生きていけます」
「お婆さん」
俯いたお婆さんの肩に手を置いた。
「初音は、会社を乗っ取ろうなんて考えて無いし、伊地知家を奪おう何て考えてないのよ」
「じゃあ、なんで会いに来るんですか?」
「会いに来るというのは御幣があるわね。時谷さんは初音を……助けてくれる。彼は……初音を導いてくれる」
何度も繰り返して自分に言い聞かせるように。
「初音を助けるために、真実を知るために初音はここに連れてこられるのです。あの子の幸せを願っているのです」
「幸せ?」
「事実は偽れるのです。鷹音。あなたも自由になっていいの。あなたの幸せも願っています」
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