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身長は高いしスタイルもいい。どこかで見た覚えがある弟の空也は推理小説家として有名で先日もテレビで見たばかりだった。
この人が兄を救う人……なのか?
お婆さんの言っている意味がよく分からなくて、まじまじと見つめてしまう。
ほんの少しの休憩時間。
コーヒーを出した俺に空也は気が付いて、手招きした。
「お前は誰だ」
単刀直入に聞かれた。その瞳は鋭い。空也は椅子に座ったままだというのに、まるで見下ろされているような錯覚に陥る。
明らかに俺を威嚇している。
「俺は、伊地知鷹音です」
俺が答えると一瞬瞳が揺れた。俺がここへ来る事は全く知らなかったのだろう。
「初音の弟か」
すぐに納得して、「初音から聞いている」と言われた。
兄は俺を知っている。
その言葉に俺の心は揺れた。
「名前……だけですか?」
兄は、兄は俺をどう思っている。15年も離れていた俺を。弟妹を。伊地知家を。
ほんの少しの期待。兄が俺を『知っている』という真実。兄が俺や伊地知家をどう思っているのかを知りたい。真実を。
「兄弟の仲はいいと言っていた」
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