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線の細いスラリとした長身。色は白く、香り立ちそうな色気をその銀色に光る眼鏡が抑えている。
女性とは違う純粋な色気。
15年ぶりに会った初音兄は昔の面影を残したまま綺麗になっていた。
男に綺麗と言うのは間違った表現かもしれないが、格好いいとも可愛いとも違う、『綺麗』という表現がぴったりマッチしていた。
会談の間、時折隣に座る空也に不安げな視線を投げる。それを受け止める空也。何気ない仕草が物語る2人の関係。
お婆さんに聞いていなければ気が付かなかっただろう。
2人は……きっと恋人同士だ。
気が付いても嫌悪感はなかった。
厭らしさを感じなかった。
兄は彼を信頼している。
それが感じられて、空也も兄を守っているのが感じられた。
そっか……そういうことか。
会談が終わると俺は一足先にお婆さんに挨拶をしてホテルの会議室を後にした。
俺は自分がこれからどうすればいいのか迷っていた。
次に何をすればいいかも分からなかった。
兄は本当に何も知らなかった。それは今のあの様子を見ていれば分かった。そして、俺に気が付かなかった。
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