伊地知鷹音という男

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「今から大事な商談があってね。まあ、事業は全て海が担ってくれるから俺は社員を派遣して補佐するだけなんだけど……鷹は隣で聞いていてくれればいいから」 「え? は? 俺……社員でもないし……」 「ん? いいよ。手続きはこれからするから」  須藤は笑って俺を後ろに連れて他の社員と一緒に会議室へと連れて行った。  それから俺は須藤の秘書兼世話役として側で勤めている。  スケジュール管理だけに留まらず、補佐役として会議に出席し、時には意見を出し、須藤と共に経営しているといっても過言ではないほどのポストを与えられている。 「何をしたいかなんて簡単だよ。自分が楽しむことだよ。そしてそれを人に知ってもらうこと」 「そんなに簡単じゃない」 「そう? 俺は自分のしたくない仕事はしないんだ。社員にそれはさせない。無理強いなんて所詮『無理』なんだから」 「だけど、それじゃあ会社は成り立たない」 「だけど、俺の会社は成り立っているよ。やりたいことを皆がしているからやる気が出るし、活気に溢れているんだよ」
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