花龍(はなりゅう) 

13/13
47人が本棚に入れています
本棚に追加
/13ページ
後で知った事だけれど。 現存する全てのソメイヨシノは、優良個体とされた一本の交雑種から、接ぎ木・挿し木という技術によって造られたクローンであるらしい。 つまりある意味、ソメイヨシノの木は日本に一本しかない、とも言えるのだという。 だから皆で想いを一つに協力する事が出来たのだろう。 しかし、人間だってそうではないだろうか。 いろんな者がいるとは言っても、同じ国に、同じ星に、同じ宇宙に生まれた仲間ならば、想いを一つに出来るのではないだろうか。 それがどんな想いであるべきなのか、僕には述べる事は出来ないけれど。 叶うならもう一度、あの人に会ってみたいとは思うよ。 はっきりと思い出せないが、夜桜の様な妖艶な美女であった事は確かなのだ。空が明るいうちには晴れやかな少女の姿で現れるのだろうか。 いや、桜の妖精ではないのだから、関係ないのかな。 だが、その時はきっとまた…… 今度は同じ手は通じないだろう。 世の中にはいろんな人がいるものだが、あの桜色の龍と同じで、あんな人には二度と出会えない。それでいいのさ。 今日も良い写真が撮れた。これからも僕は桜を追いかけ、撮り続けるだろう。 人知れずこの国を守った、愛すべき花を。
/13ページ

最初のコメントを投稿しよう!