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クラウドファンディング
「ああァ、これからは、もっと労働環境を整えないと『正義の味方』も良い人材は確保出来ないだろうねえェ」
大幹部も腕を組んでうなずいた。
「でしょ。怪人と闘って死ぬかもしれないのに保険にもかかれない。ケガしても自腹で治療費を払え。しかも怪人退治はボランティア活動で無報酬って。あんまりよ。絶対、あり得なくなァい?」
「そうだな。正義の味方の窮状を、広く世間に知ってもらってクラウド・ファンディングで報酬を支払う形にするとかね」
「えッふぅん、なるほどねえェ。クラウド・ファンディングかァ。さすがダーリンねェ。良い考えだわ」
ピンクは大幹部に抱きついて頬にキスをした。
「フフゥン、別に大したアイディアじゃないよ」
大幹部は照れたように苦笑した。
「ねえェ、そういえばダーリンと初めて会った時、本城マリアさんって人が親戚にいないかって訊いてきたわよね?」
「ああァッ、そうだったな。ピーチと良く似てたからね」
大幹部は困惑ぎみに苦笑いを浮かべた。
「ふぅん、じゃァ私みたいにキレイな人なのね」
桃田ピーチは胸を張って自画自賛をした。
「えッ、まァッそうだな。ピーチみたいにキレイな人だったよ」
大幹部もおどけたように肩をすくめた。
「キレイな人だったって。まさか、その彼女、亡くなったの?」
少し心配そうに聞き返した。
「あッ、いやァまさか。もう彼女は人妻だからね。それに旦那さんの仕事の関係で海外へ転勤したから今さら手が届かないよ」
大幹部は自嘲ぎみに笑って視線を逸らした。
「そうなの。亡くなってないなら良いけど」
「フフッ、まァね」
思わず大幹部は苦笑したものの、とっさにウソをついてしまった。
確かに本城マリアは大幹部・ダークネスギルディアが、かつて付き合っていた彼女だった。結婚しても良いとさえ思っていた。
しかし本城マリアはすでにこの世には存在していなかった。
何者かによって殺されたのだ。
その真犯人は秘密結社ギルディアの者ではないかと推測された。けれども警察は無力で真相は闇の中だった。このままでは迷宮入りだ。
そこで彼は単身、秘密結社へ潜入し内部から事件の捜査を始めていたのだ。
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