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正義の味方
「マジで?」
「ああァあの時はマジで助かったよ」
悪の大幹部は照れ笑いを浮かべた。
「そう、じゃァ、その『正義の味方』に助けて貰った時、ちゃんとお礼をした?」
「え、そりゃァもちろん『ありがとう』って頭を下げたさァ」
思わず大幹部も苦笑した。
「ふぅん、たったのそれだけ?」
「たッ、たったのそれだけって。他にどうしろって言うんだ?」
「もちろん、お礼よ」
「お礼ってまさか、チップをはずむワケにもいかないだろう」
「はァ、どうして?」
桃田ピーチは少し冷めた目で悪の大幹部を見つめた。
「えッ、だって正義の味方に金銭的なお礼をするなんて話し聞いたことないじゃん」
「ふぅん、やっぱダーリンも正義の味方はピンチを救ってくれるのが当たり前。勝手にボランティア活動をしているだけだと思ってるのねェ」
「ううゥン、別に勝手にってワケじゃないけど」
「どこの世界になんの見返りもなく助けてくれる人がいるの。信じられなァい。警察官も消防隊員も自衛隊員だって無給で命を掛けてるワケじゃないでしょ」
「まァそりゃァ、そうだけど」
「ねえェッ、知ってるゥ。アメリカじゃァ、ホームレスが道に倒れてても保険に入ってないと救急車が運んでくれないんだってェ。もちろん救急車は有料で、安く見積もっても十五、六万円くらい掛かるらしいわ。お金がなければ、治療もしてくれないって話しよ」
「まァ、ねえェ。その辺はドライだからアメリカは!」
「そう、けど日本じゃァ、誰かが倒れてたら救急車で運ばないと、あとで非難轟々じゃん。たとえ無一文のホームレスだとしても」
「ああァ」
「正義の味方も同じなのよ」
「えッ、同じ?」
「そうよ。怪人に襲われている人がいたら、何が何でも無条件で助けないと、あとで何を言われるかわからないわ。炎上案件なのよ」
ピーチはつらそうに話しを続けた。
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