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バチは当たらないでしょ
ピーチはつらそうに話しを続けた。
「ううゥン、言われてみれば、そうだね」
悪の大幹部も腕を組んでため息をついた。今まで正義の味方の給与体系など考えたこともなかった。
「いくら身体を張って一般人を救助しても報酬はゼロなのよ。信じられるゥ。どんだけブラック職業なのよ。命がけで仕事をしても、ボランティアだから給料はゼロで良いわねって。どうなの」
「そりゃァそうだけど……」
「しかも怪人と闘って骨折や怪我を負っても保険もおりないし、入院しても自腹で治せとか、ちょっとヒドくなァい?」
「ううゥン、言われてみれば、その通りだね」
考えてみれば理不尽この上ない労働環境だ。おそらく正義の味方の番組を視聴するのは少年たちがメインなので親などを考慮し、金銭の授受など生々しいことは省いているのだろう。
「ッで、いざ治療費を請求すると、『えッ、正義の味方がお金を取るの?』って顔されるし。バックれるのよ。信じられなァ〜ーい。正義の味方はどんなに闘っても無報酬じゃなきゃ、やっちゃイケないの?」
「いやいや、そんなことはないよ」
「こっちは必死にソープランドで稼いだ金をつぎ込んで、正義の味方を続けてるのよ。生活費も削って」
「ああァそうだね。ピーチの言う通りだよ」
「正義の味方にも労働に見合った報酬を要求したってバチは当たらないでしょ」
「ああァその通りだね」
「こっちだって大金持ちの道楽で人助けをしているワケじゃないのに。食費を切り詰めて。スマホ代だって滞納してるって言うのに」
「ああァ」
「正義の味方が命がけで怪人と闘って、どんなに傷ついても、『ありがとう。また助けてね』って、ひと言礼を言って、『ハイ、さようなら』って。そんなの悪の秘密結社よりもヒドくなァい?」
「まァ助けてもらった一般人も悪気はないんだろうから」
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