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「本当に、いいお嬢さんね」
「うん、父さんも気に入ったよ。今時珍しい、おしとやかなお嬢さんだね」
「父さんも母さんも気に入ってくれたんだね?良かった。じゃあ、話を進めていいかな」
「母さんはいいと思うわよ。あんな人がお嫁さんに来てくれるなら、嬉しいわ。お父さんもいいわよね?」
「ああ、父さんも大賛成だ。じゃあ、早速先方のご両親にご挨拶しなきゃいかんな」
「え、ちょっ、もうそういう話?」
「ばか。こういう話は、どんどん前倒しに進めなきゃ駄目だ」
「そうよ。善は急げって言うでしょ。まったく、あんたは昔から、のんびりしてるんだから。とにかく、早く電話してあげなさい」
「うん。お父さん、お母さん。どうも有難う」
「もしもし、俺。圭介」
「ああ、圭介君?で、ご両親なんだって?」
「もう、パーフェクトさ。親父もお袋も、俺たちの結婚に大賛成だって」
「良かったあ!そんなに気にいってくれたんだ!嬉しい」
「俺もよかったよ。早速お前のご両親にもご挨拶しなきゃなんて話になっててさあ」
「もう、そんな話まで出てるのね?なんだか展開早すぎていまいち現実感が無いくらいよ」
「これは現実だよ。俺たち本当に結婚するんだよ」
「嬉しい。圭介君と夫婦になれるんだね。そうだ、あたしもこれから親に電話しなきゃ」
「まあ、それにしても圭介が、自分で嫁さんを見つけてくるとはなあ。大人になったもんだ」
「え、それって、ひょっとして褒めてるの?有難う」
「あんまり調子に乗るなよ。ただでさえ、お前は昔からぼうっとしたところがあったんだから」
「そうかなあ。俺ってそんなにぼうっとしてた?」
「そうよ。小さい頃からちょっと夢見がちな子だったわね。一人でおとなしく遊んでるかと思うと、誰もいないところにむかって話しかけたり、笑ったりすることがあったわね」
「え、それって何よ、ホラーじゃん」
「お前は全然覚えてないのか。一時、父さんも母さんもかなり心配してたんだぞ」
「全っ然覚えてない。勿論、小さい頃、近所の同じ年ごろの子供たちとよく遊んでた記憶はあるけど」
「勿論、近所の子供たちと一緒に遊ぶこともあったわよ。ただ、一人でいる時にも、誰かと楽しそうに話してることがあったのよ」
「まあ、今でいう、イマジナリーフレンドってやつだったんだろうな」
「名前もいくつか呼んでたわね。最初はミミちゃんとか言ってたら、暫くするとマナちゃんになったりね。イマジナリーフレンドも何人かいたみたいよ」
「ふーん……とにかく全然覚えてないんだけど。でも、それって女の子の名前っぽいね。俺って、結構もててたのかなあ。はは」
「ばか。とにかく、これからはそんな浮ついた調子じゃダメだぞ」
ああ、本当によかった。今、本当に幸せよ。私の両親も、大喜びだった。パパなんか、もう涙声になってたわ、本当に気が早いんだから。ふふ。
あの時は、まだ三歳児だった圭介。息をのむほどかわいかった。本当に天使みたいだったわ。そんな圭介と遊びたくて、いっつも色んな子が彼の周りに群がっていた。そう、生身の子も、そうでない子も……。圭介の無垢な目には大人には見えないものが普通に見えるから、あの時は人間の目には見えない存在だったあたしたちのこともちゃんと認識してくれていた。
まあ、子供達の世界でも、色々あるのよね。それは見えない子供たちどうしの世界でも、同じこと。
最初に圭介と遊んでいたミミとかいう邪魔な子を追っ払って、私は圭介を独占していた。でも、それから間もなくこの世に生まれることが決まったので、その直前に私は圭介の記憶をまるごと消したのだ。やっぱり、ミミをいじめて追い出したこととか、圭介に意地悪な言葉を吐いた事とか、記憶のどこかに残っていたら都合が悪いもんね。そして私は転生し、現世で圭介に近づき、首尾よく彼の心をゲットすることに成功したというわけ。
ああ、今、本当に幸せ。これで二十年越しの計画が実ったわ。ふふふ。
[了]
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