おまじないってお呪いって書くよね? 前編

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おまじないってお呪いって書くよね? 前編

 モテる彼氏を持つと、大変だと思う。  特にこの時期は大変極まりない。  何故かというと。だ。  彼氏が貰ったバレンタインデーのお返しを、作るのは彼女の役目だからである(諸説あります)  いや。別に彼氏がチョコレートをもらったからと言って、彼女がそのお返しをする必要なんてない。ないのだけれど、考えてみてほしい。これはチャンスである。  モテモテ君には私がいるのよ。  手出しするんじゃないわよ。  と、マウントがとれるチャンスなのだ。  けれど、それには絶対条件があるのを忘れてはならない。  そう。返礼品を用意するためのセンスと料理の腕だ。その行為は一つ間違えれば、舐められて。  あら。こんなものなのね(失笑)  と。なってしまう諸刃の剣だ。この、大いなる賭けに負けて、涙を飲んだ女性は少なくないだろう。  財力にものを言わせるのは簡単だ。それでもセンスは問われるのだが、有名店の市販品を選んでおけばほぼ間違いはない。しかし、しかしである。それで勝ったと言えるのか? いや、言えないだろう(反語)  そもそも、彼女がいると分かっている男に玉砕覚悟でチョコレートを渡してくる女である。諦めは悪いし、料理の腕にも、センスにも、自分自身にも自信があることが往々にしてある。口では『好きな人がいるのはわかっています。でも、どうしても私の気持ちを知ってほしくて』とかしおらしいことを言いつつ、内心では『あー。ワンチャンねーかな』と、思っていることは間違いない。  そんな女の前にだ。いくら高価だからと言って、市販品でお茶を濁すのは負けに等しい。  あくまで、手作り。それが、勝利への絶対条件。モテ男を独占するためには、不可避の戦いなのである。  何はともあれ、ホワイトデー。それは、モテ男の彼女の実力が試される試練の日であった。
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