すべてのはじまり①

1/1
385人が本棚に入れています
本棚に追加
/20ページ

すべてのはじまり①

   目を覚まして。  視界に映った天井が、見慣れた自宅のものではないと気付くのに、  俺────幸村 大知(ゆきむら だいち)は数秒を要した。   「??」    瞬きを繰り返し、何度も天井を凝視したが、やはりここは自分の家じゃない。違う場所だ。    昨夜は宴会に出席し、大好きな酒を飲んでいた。飲んで、同僚達と楽しく騒いでいたはずだ。そこまでは覚えている。  だからこの頭痛は、きっと二日酔いのせいだろう。  それにしたって、どうしてこんなに身体の節々が痛むのだろうかと、大知は昨夜の事を反芻した。  しかし全く見当が付かず、霞む目を擦りながら、とりあえず状況を確かめたくて、痛む身体に顔を顰めつつ起き上がろうとした────その時。    自分の顔のすぐ横に手が見えて、大知は固まった。  大知の手はここにある。左右両方、ちゃんとある。  なら、この手は一体誰のものだというのか。  すると、声が降ってきた。 「おはよう、幸村くん」  まさにこれが、幸村 大知の順風満帆な日々に待ったがかかった瞬間だった。  
/20ページ

最初のコメントを投稿しよう!