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すべてのはじまり①
目を覚まして。
視界に映った天井が、見慣れた自宅のものではないと気付くのに、
俺────幸村 大知は数秒を要した。
「??」
瞬きを繰り返し、何度も天井を凝視したが、やはりここは自分の家じゃない。違う場所だ。
昨夜は宴会に出席し、大好きな酒を飲んでいた。飲んで、同僚達と楽しく騒いでいたはずだ。そこまでは覚えている。
だからこの頭痛は、きっと二日酔いのせいだろう。
それにしたって、どうしてこんなに身体の節々が痛むのだろうかと、大知は昨夜の事を反芻した。
しかし全く見当が付かず、霞む目を擦りながら、とりあえず状況を確かめたくて、痛む身体に顔を顰めつつ起き上がろうとした────その時。
自分の顔のすぐ横に手が見えて、大知は固まった。
大知の手はここにある。左右両方、ちゃんとある。
なら、この手は一体誰のものだというのか。
すると、声が降ってきた。
「おはよう、幸村くん」
まさにこれが、幸村 大知の順風満帆な日々に待ったがかかった瞬間だった。
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