嘘のスイーツ

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嘘のスイーツ

今年も4月1日がやってくる。 エイプリル・フールと呼ばれ、1年で1日だけ嘘が許される日。 俺、千夜保(せんや たもつ)は不良出身のパティシエだ。 妻の香澄(かすみ)は高校教師。 俺等は、街の中心でケーキ屋モサコを立ち上げた。 だが、開いたばかりのケーキ屋は客がなかなか来ない。 俺の生計は香澄の給料に頼っている始末だ。 せっかく単身フランスへ渡って修行してきたってえのにこのままじゃいけねーと思っていた。 「嘘のスイーツだと?」 暦の上では3月に入った当初の夜。 俺は香澄と、親友で大学院生の鈴木航(すずき わたる)と1応1つ先輩の山村凌(やまむら りょう)の4人でグループ通話をしていた。 嘘のスイーツの話を持ち掛けたのは鈴木だった。 『はい、一見とても美味しそうなスイーツですが食べてみると食べられない素材で出来ている嘘のスイーツです』 『えー!食べられないのー?』 「でもエイプリル・フールに因んでいて面白そうね」 山村には不評だが、香澄は興味を示した。 「確かに話題性は有りそうだが、客が来ないと意味ねーだろ」 「大丈夫です。事前にこちらでも美味しいスイーツ1日限定商品として宣伝しておきますから」 勿論、当日4月1日日曜日は他の美味いケーキも売りに出す。
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