春が来た

1/1
1人が本棚に入れています
本棚に追加
/1ページ
「……はあ。今日もうこれで5件目やぞ。酔っ払いの傷害事件。酒弱いんなら飲むなや。まったく…」  さらさらと桜の靡く春の京都に佇む、京都地方検察庁棗藤次検察官室。  調書を閉じて眼鏡を取りながら、ブチブチとそんな事をこぼしていたら、佐保子がすまなさそうに眉を下げて、次の調書を持ってくる。 「うんざりなとこ申し訳ありませんが…次も傷害です。お花見で酔った勢いで、肩が当たった相手をビール瓶で殴ったそうです。」 「……………」  …もういっそ、花見などなくなってしまえ。  そう心の中で叫び、藤次は眼鏡を掛け直し、佐保子に渡された調書を開いた。  酒は飲んでも飲まれるな。  …皆々様、くれぐれも平和で快適なお花見を、お楽しみください。  棗藤次からの、お願いです。
/1ページ

最初のコメントを投稿しよう!