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「回想の中の鳥」
〇月✕日、木曜日、晴れ。
今日も、鬱屈とした日々を過ごす。
といっても虐められているとか、成績が進級出来ないほど絶望的だとか、そういう訳では無い。
──────いや、中にはそういう人も居るには居るらしいが。
ただ、この心の中の微妙な蟠りというか、心の曇ったガラスのようなものを晴らしたいという気持ちなのだ。
授業が始まるまでのこの数分間。何をするでも無く、只ぼうっと窓の外を眺めて潰す時間が、今は恋しくなっているほどだ。
え?友達とかと話さないのかって?──────まあ、居ない訳では無い。でもなんというか、友達と言うには関係が浅く、こういうちょっとした時に何かを話すには物足りない、そんな相手なのだ。
知り合いと読んでしまうほど些細な関係でもないのが、余計に辛いところなんだけど。
まあそもそも、関わりたくても今は各々やる事があり教室には居ないので、どちらにせよ手持ち無沙汰な状況は変わらないんだけれども──────
ただ時間を浪費するには惜しく、然し何かをするには足りない──────そんな微妙な時間。それが今なのだ。
・・・・・・え?誰かに話しかければいいだろって?そんなに俺はコミュニケーション強者なわけじゃないぞ。
あ、危ない危ない。授業の準備はしとこう。
──────で、まあ暇だし。ありきたりだけども、適当に今日の晩御飯のことなんかを考えたりしていた。
その内にネタが無くなってきて、視線や表情も誤魔化しがきかなくなって来た。
何かないか・・・・・・と、そう頭の中を探していたら──────
そういえば、と。少し前の日のことを思い出していた。
忘れるわけない。忘れられ無い。ひと夏の思い出と言うには、余りにも衝撃の強い出来事だった。
確かその日も、他に話し相手が居なくてこんな風に暇を持て余していたような気がする。
──────それは、ある少女との邂逅の話。
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