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「あっ」
開口一番、俺は後悔が口から漏れだした。
先客が、居た。それだけで今日の選択を後悔しそうになったが、よく考えればここはそもそも立ち入り禁止なのだから、既に侵入している人に咎められる筋合いは無いのでは?という名推理が頭に浮かんだ。
まあそれは同時に、自身の有罪を証明してしまうものでもあるし、なんなら目の前の子が何かしら理由があって屋上にやって来ていた場合、悪いのは俺だけとなる。
なんてこった、最悪のパターンだ。俺の放課後は反省文という名の泡と消えてしまった。
・・・・・・という想像が頭をよぎった。
しかし、待てども待てども相手から話しかけられることは無く。
そして次の瞬間に、状況の異常さを理解する事になる。
「あ、え?」
周囲の空は水色と灰色の中間くらいの空模様で、晴れとも曇りとも言い難い感じの天気だ。夏なのでほどほどの風が吹いてきてそこそこに心地よく、また鉄格子と金網で組まれた手すりが、申し訳程度の高さで出っ張ったコンクリートに生え、落下防止の柵となっている。
周りの一見して何の変哲もない景色に混ざって、大して通いつめた訳でもない屋上だとしても分かる変化がひとつ。
景色の中央に人が居る。そしてその人は、普通では無かった。
いや、その人自体の見た目に関しては至ってごく普通なのだ。しかし状況がおかしかった。
・・・・そこに居るのは、うちの制服を着た女子生徒。彼女は、手すりの向こう側におり、ともすれば落ちてしまいそうな雰囲気だったのだ。
一瞬びっくりして思わず声を上げそうになるが、よく見れば彼女は手すりに手を置き、腰を下ろしているように見える。
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