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ああ、なんだ。見間違えか・・・・・・という安堵の感情を抱きつつ、バレない内に足早に屋上を去ろうとする。特に危ないわけでは無いのなら、わざわざ危険を冒す必要は無い。屈辱的だが、弁当は教室の隅の席で食べることにしよう。
そうして、入ってきた扉のドアノブを引こうとして──────
──────だが、何となくこのまま放置していくのは良くないんじゃないか。そんな感覚がふって湧いた。
ぶっちゃけ、この時点では彼女が本当に落ちようとしていたかとかはどうでもよかったが、何となく気分がそういう感じだったのだ。
あとまあ、もしまた一人になった時、ここでこの人と仲良くなっておけば、時間を潰せるかもしれない・・・・・・なんて浅ましい考えもあった。
「ねえ、あのさ」
───風が背中を吹きつける中、少女に話しかける。
「──────なあに?」
返ってきたのは、思ったよりも気の抜けた、これから死のうとしていた人とは思えないような軽快でふわふわした返事だった。
「ん、いや・・・・・・なんか用があるってわけじゃないんだけど・・・・・・ですけど」
そういや学年分かんないな、と今更ながら途中で敬語に言い直す。万が一3年だと面倒だなぁなんて思いながら。
ちなみに俺は2年生だ。
「なんか・・・・・・悩みとかあったり?するの・・・・・・ですか?」
もうちょいスムーズに聞けないのかと、自分で自分にツッコミを入れる。ほら彼女もポカーンとしちゃってるし、もうヤダ。早くも回れ右して教室に戻りたくなってきた。
間が持たなくってちょっと焦り始めた。変な汗出てるし、挙動不審だなこれ・・・・・・。
次になんて声かけようか迷っていたら、さらにど壺にハマってしまい言葉が出なくなる。
あれ?俺こんな会話下手だっけ.....?
その様子を見ていた彼女が、くすっと片手を口に近づけながら微笑む。
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