血の塊

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5 病院の玄関で、看護師二人を見つける。天堂と待ってて、と伝えて車を出してくる。 「どうぞ」  スポーツカーに三人を乗せると、車内では飛山がはしゃいでいた。 「天堂先生と飲めるなんて嬉しいです~」 「……はあ」 「天堂先生飲み会とか来ないもんね。レアだよレア。激レア!」  平沢もそれにのって盛り上げる。まあ、よかったのだろろう、か。  行きつけのバーにつくと、コインパーキングに停める。 「まあ、どうぞ。ここ何でもあるから。ご飯も食えるし」 「そうだねー、乾センセ、お昼食べてないから腹ぺこじゃない?」 「そうだね、通り越して何も感じてないよ」 「低血糖になっちゃいますね」 「……」  まさについてきた、という態度の麻酔科医であるが、私服は意外とカジュアルだ。デニムに黒のジャケット、中は黒のTシャツ。マスクで顔を隠していなければ、芸能人のように整った顔をしている。しかし、更衣室でのあの態度は、なんだったのだろう。  揶揄っていながらも、少し心躍る自分がいた。この綺麗な顔を歪めたい。可愛い子をいじめたい、の感情か……可愛い?可愛いとはほど遠いが、まあ確かにこの頑なである態度をどうにかしたい欲望はきっと誰にでもあるだろう。 「天堂先生って、休日とか何してるんですか?」 「まあ、音楽聴いたり」 「ええー、音楽」 「飛山音楽好きじゃん、フジロックとか行ってるんでしょ」 「ロック聴きますか?」 「……ロックは聴かない」  しゅん、とした飛山の態度に少しにやける。そうそう、この男は多少のことでは揺らがない。こうでなくちゃ。  助手席の平沢が助け船を出す。 「でも、音楽好きならいいじゃない、趣味同じって事で。ね!」  突然自分に振られて、あ、うん、と何でもないような返事しかできない。そもそも、天堂は後ろに女と二人で乗っているのに、ドア側に寄っている。近い距離にしようという気は感じなかった。 「音楽は、何を」  もう少し情報を掴もうと、そう聞いてみる。面倒臭そうに天堂は言う。 「クラシック」
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