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天堂がどう女に接するのか見たい。本当は、どうやって女を抱くのかを見たいのかもしれない。焦燥感にも似た、不思議な感情が渦巻く。そのままタコライスを頬張ると、スパイシーなはずなのに味が分からなかった。
「天堂先生って、ミステリアスで素敵ですよね」
「……どうも」
素っ気なさは変わらない。そもそも、自分は報酬としてきている、と言わんばかりのスタンスである。これで、若い飛山が天堂をものにできるのかはみものである。
「好きなタイプとか、どんな感じですか」
「特には」
「ええー。知りたいなあ」
何気なくすり寄る飛山は、一年目なのにかなり男好きするタイプだ。若くて可愛くそこまで賢くも無く、適当に隙があって、男が攻め易くもある。
どうしてもちょっかいを出したくなるのは、この天堂の何がそうさせるのだろう。腹は立つけど、話しかけたくなる……
「巨乳派ですか、貧乳派ですか?」
「セクハラですよ」
即座に天堂からお叱りを受ける。女性陣の方がキャハハ、と笑っているという不思議な状況。セクハラ、の意味を考えてみる。男なら笑って流せそうな範囲ではあるのに天堂はあまりにもガードが堅くてどうしたらいいか分からない。いやいや、別に飛山が天堂を誘っているのだ。これではまるで俺も天堂を口説いているような思考回路である。
「えーと、先生は結構ガード堅いんですかね」
すると天堂は眉間に皺を寄せたまま、話す。
「男女の話ですか」
「そうそう」
「私は仕事も、プライベートも、何もかも分けて考えてません。全て同じですから」
「ほう、それはすごい」
「すごくはないです、単に人間の種類の違い、というだけです」
「あまり見ませんけどね、だって皆、仕事しないで休みたいでしょ」
「別に休んだって退屈ですし」
「ええー温泉とか、行きたくないですか?ゆったりまったり」
平沢が言うと、いや、と天堂は否定する。これは相当な朴念仁かもしれない。
「でも鍛えてそうですけど。何かしてるのですか」
「ジムには行ってますが、別にただの健康のためですし」
「すごいストイックですね~素敵だなあ」
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