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「……」
「約束です」
「分かり、ました」
しぶしぶ了解する。こんな大変な手術前に心を揺さぶられたくは無い。それに、今日は父が来るのだ。
「よろしくお願いします」
父の声だ。手術室の中に挨拶に来たようだ。
「お久しぶりです、父さん」
「見違えるような医師に成長しているようだね。元気にしているかい」
「……はい」
「お前の麻酔を見たかった。期待しているよ。こちらは助手の今枝(いまえだ)医師」
「今枝です。よろしくお願いします」
おおよそ、外科医、とは見えないような華奢な青年である。が……童顔なのか、、年齢不詳で分からない。
「お若いですね」
「いいえ。そんなに見た目ほど若くは無くて。天堂先生のご子息ですか、お世話になっております」
ニコニコと可愛い笑顔の外科医、今枝は、学生のような出で立ちである。しかし、父の片腕として気に入られているようだった。
「僕、天堂先生に憧れて、大学病院まで追いかけたんです」
今枝の姿を見ていると乾が声をかける。
「潤一郎……?」
「えっ、あれっ」
お互い顔を見合わせる。
「乾先輩!先輩ですか」
「潤一郎……!立派になったな」
熱い目線が乾に注がれる。この、今枝と言う医師、乾の後輩ということか。
「まさか、仕事で会うとは思わなかった」
「僕もです。先輩、ここにおつとめなんですね」
「うん、結構長いよ」
「僕は、今天堂教授と」
「天堂です。息子がお世話になっております」
丁寧な挨拶をしているが、父は若い私を犯した人物だ。何も、反省の余地などない。子の男は、自分の性欲正直だ。あとは権力……脅され、犯される人生はもうウンザリだ。
「よろしくお願いします」
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