2人が本棚に入れています
本棚に追加
/6ページ
テーブルいっぱいに豪華な料理が並んでいる。
コンフィや赤ワイン煮、燻製まである。すべて、セリカの恋人である菖太朗の好物の肉料理だ。
今日はふたりにとって特別な日。セリカは今日くらいはと、苦手な料理を頑張ったのだ。
「これはまた、今日はずいぶんと豪華だね」
菖太朗は椅子を引きながら、テーブルに並んだフレンチレストランばりの料理に感心する。
セリカは言った。
「今日はあなたとの最後の料理だもの。特別にしないとと思って」
セリカの「最後」というセリフに、菖太朗はわずかに顔をひきつらせ、唇を引き結んだ。
「もう、そんな顔しないでよ。べつに怒ってないから」
セリカは微笑み、菖太朗が座るテーブルに向かい合うようにして腰を下ろした。
「あぁ……うん」
菖太朗はどこか気まずい顔で頷いた。
セリカと菖太朗は、婚約まで済ませた恋人同士だった。
……今日までは。
最初のコメントを投稿しよう!