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「相変わらずミーハーな部屋だな」
俺はミチの部屋に入るなり、大勢の男子に迎え入れられた。
サラサラの黒い髪、リスのような目、サクランボ色の唇――皆一様の顔をしている。
「だって。涼さまは神だもん」
ミチは語尾にハートをつけて、そしてそれが形として現れるが如く、ハート形の目をして“涼さま”に頬ずりする。
大勢の男子、皆一様の顔、とは彼女の好きなアイドル“黒須涼”のことだ。
楽曲はその道のプロ任せだが、その甘く透き通るような歌声はそれなりに歌唱力があるらしい。童顔の彼から放たれるパワーのある声が、ギャップがあってさらに“萌え”なんだそう。
そんな彼のポスターや雑誌の切り抜き、ミチ手作りのうちわなんかが部屋一面に飾られている。
ベッドの上にも、涼の顔がプリントされたクッションや、抱き枕までが大事に置かれている。
ミチといつも添い寝しているわけか、クソッ。
俺だって一晩中ミチを抱いて寝たいわ。
だけど高校生の俺たちにとって、お泊りなんて言語道断。
既にそういう関係はもっているものの、一晩を一緒に過ごすなんて遥か先の夢だ。
彼氏の俺がいるのにも関わらず、今尚“ただいまぁ、涼さま”なんて壁に貼られた彼の頭を撫でている。
俺はたまらなくなってミチを抱きしめた。
すると彼女はうーん、と、首を傾げて俺を見上げた。
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