1

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/24ページ
 僕は家族にでさえ、存在感が薄い人間だと思われている。いつかの家族旅行のとき。サービスエリアで休憩をして、再び出発するときに、僕はサービスエリアに置き去りにされてしまった。  高校のクラスメイトも同じだ。名前はともかく、名字すらも覚えられていない。  透明にはなったものの、感覚は残っているようだ。  もう一度、さきほど驚いて落としてしまったスマートフォンを掴んでみた。スマートフォンは、見えない力によって、宙に浮かんでいるように見える。マジシャンのマジックのように。  僕はなんだか気味が悪くなり、スマートフォンを宙から落とした。  僕は息をひとつ吐き、今後について思案した。意外と冷静なようだ。  こんな状態でも学校は休めない。  しばらく、左腕と左手が存在していた部分を、ぼんやりと眺めていた。  僕は母と父には、品行方正な少年で通っている。僕は小学校から現在まで、遅刻はおろか、病欠さえもしたことがない。その記録には、僕以上に両親がこだわっている。  それが、休めない理由でもある。
/24ページ

最初のコメントを投稿しよう!