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僕は家族にでさえ、存在感が薄い人間だと思われている。いつかの家族旅行のとき。サービスエリアで休憩をして、再び出発するときに、僕はサービスエリアに置き去りにされてしまった。
高校のクラスメイトも同じだ。名前はともかく、名字すらも覚えられていない。
透明にはなったものの、感覚は残っているようだ。
もう一度、さきほど驚いて落としてしまったスマートフォンを掴んでみた。スマートフォンは、見えない力によって、宙に浮かんでいるように見える。マジシャンのマジックのように。
僕はなんだか気味が悪くなり、スマートフォンを宙から落とした。
僕は息をひとつ吐き、今後について思案した。意外と冷静なようだ。
こんな状態でも学校は休めない。
しばらく、左腕と左手が存在していた部分を、ぼんやりと眺めていた。
僕は母と父には、品行方正な少年で通っている。僕は小学校から現在まで、遅刻はおろか、病欠さえもしたことがない。その記録には、僕以上に両親がこだわっている。
それが、休めない理由でもある。
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