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教室の前に着くと、僕は扉を開けるのを躊躇した。扉を開けたとき、意志のない視線がこちらに向くことが嫌いだから。
僕がいつも早めに登校するのはそれを避けるためでもある。
今日は仕方がない。なにせ、左腕と左手が消えてしまったのだから。
教室に入るとき、ポケットから手を出した。ポケットに手を突っ込んだままだと、生きがっているように思われるかもしれない。
引き戸に手をかけ、扉を開けたとき、いつもより扉が重たい気がした。
教室の中からは、いくつかの視線が、僕の方に向けられた。
僕は赤外線レーザーを掻い潜るようにして、自分の席まで向かった。
僕の今日の格好に対しての質問は、当然のように誰からもなかった。
ただ、三人でワンセットの女子達が、僕の方を何度か見て、僕のことを嘲笑しているように感じただけだ。
僕が席に着いて五分もしないうちに、担任教師が教室に入ってきた。
教室の中ではいつも通りの時間が流れ、何事もなく放課後を迎えた。
ホームルームが終わると、僕は一目散に教室を飛び出した。
早歩きで校門に向かっていると、背後から、同じような足音がした。
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