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へえ、と言いながら、言うほど手っ取り早くはない気がしていた。
疑問に思ったので、訊いた。
「そんなの、一通り知り合いから巻き上げたら、頭打ちじゃないの? そこから先はどうなるんだろう?」
「そっから先はさあ、どんどん悪くなっていくんだってよ。今度来たらあんま関わんないほうがいいよ」
どんどん悪くなる。
なにをするようになるんだ?
どんな悪いことまで、やるようになるんだ?
僕がいた町は、都会でも何でもない、千葉県北西部の新興住宅地だ。
住宅と畑と林と丘のある、のっぺりとした平和な町だった。
悪いことなんて、あったとしても、万引きくらい。そんなイメージ。
ここで育った人が、どんどん悪くなる?
ヤクザ? あの? 薬物を売ったり、人を追い込んだりする、あのヤクザ?
この日は風が強くて、花吹雪が起きた。
みんな、わあ、と歓声を上げて、楽しそうにしていた。
その様子を見ていて、少しだけ思った。
僕は中学の時、友達がいなかった。
クラスメイトも、知り合いも、打ち解けた人もいたけど、「友達」はいなかった。
カヒガシくんはどうだったんだろう。
その後、いくつかのお花見に参加することがあったが、いつもなんとなく苦手だった。
華やかさとにぎやかさに紛れて、悪くてつらいことが裏で起きていて、知りたくもないそれをこっそり聞かされるような気がした。
大人になって家を出る少し前、中学の時のクラスメイトが、ヤクザに借金の取り立てをされたという噂を聞いた。
それがカヒガシくんや、カヒガシくんの仲間によるものだったのかどうかは知らない。
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