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お花見文化
「結局全部買ったってことですよね?」
琴子先輩はローストビーフを貪る。
「そういうことだな。あ、あれも美味しそう!」
「おい、啓介。大食いも大概にしろ、プレゼン、トイレで間に合わないんじゃないかって心配になったんだが?」
「すみません! でもせっかくオーナーが最初の花見を俺たちにってパーティまで開いてくれたんですから。四つともなかなかいいですな。もちろん俺たちのが一番目立つけど」
「散る分、地面に鮮やかさが広がっているので」
「作太の話を聞いて全部買うことにしたそうだ。このまま出世するかもな。主任になるか?」
「愛音さん、意地悪しないでください!」
「いや、結構真面目に言ってるんだけどな。よく観察しているし」
啓介さんは大量の食べ物を抱え込んでいる。
明日までお腹を崩すのだろう。
愛音さんは豪快にステーキを食べていた。
かわいらしい八重歯が見える。
「作太?」
「いえ、なんでもありません」
「ゲームセンター行ったのが良かっただろ?」
「そうですね」
「また行くか?」
「いいですね!」
「個性的な木だな。とはいえ、作太が集めた資料を見ているとソメイヨシノが並んでいるところも見たいものだ。クローンだったか」
「クローンゆえに感染症に弱かったそうですね」
「あんなにたくさんあったソメイヨシノがそう簡単に枯れるだろうか?」
「怖い話ですか?」
「いや、花は美しいものだが。人によっては不快だったのかなと」
「僕にはその気持ちは分かりません」
「私もだ。な、作太」
愛音さんが僕の頭を激しく撫でる。
「よく頑張ったな」
「ありがとうございます。ってわちゃわちゃ長くないですか?」
「つい」
「ついって」
「あれえ? 愛音ちゃんが乙女の顔してる」
「おうおう。俺にも見せろ」
「黙れ!」
「「いったー」」
「ついに春が来たってことですね」
「俺たちの花も春が最大出力だからな」
「お前たち、少しは馬鹿を直せ!」
「あ、愛音ちゃん。せっかく花木を作ったので花言葉を作りません?」
「俺はパワー。世の中力こそすべてだ」
「私は却下です。平和とかどうですか?」
「ださい」
「愛音さん、ひどい!」
愛音さん、琴子先輩、啓介先輩の視線が集まる。
「みんな一緒とかどうですか? みんな楽しめて、それでいて毎年枯れずに咲き続ける。そういう花なので」
「そうだな。作太の言う通りだ」
「私も賛成かな。作太くんもロマンティックですな!」
「俺もかな。一応プレゼンは間に合って、みんなで勝ったわけだし」
みんな一緒。
僕らのこの花木がいつまでも咲き続けますように。
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