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これって、デートでは!?
「仮眠しただろ。帰るぞ、作太」
「でも今日中に決めたいものがあって」
「なんだ?」
「花のことで悩んでいて。大昔の文献によると満開で人が集まるくせに、なぜか散ることも美しいという人がいるそうで」
「人と違うことに誇りを持つ、逆張りくそ人間だろ」
「本当にそうでしょうか?」
「あー、知らん。だが休日だ。今日は何としても帰らせてやる」
「主任、けど僕は帰っても寝るだけなので」
「はあ。仕事のために生きるなよ、作太」
「でも家でゲームするかどうかくらいで。そんなの無駄だと思ってしまいます」
「そうか。休日に休むのも大事なことだ。分かった、私の奢りでゲームセンターでも行くぞ。今日は私も休みだ」
仮眠を終えて仕事を再開しようとすると、愛音さんに全力で止められた。
そして、一緒にゲームセンターに行くことになった。
って、これってデートでは?
いやいや、愛音さんは主任で、でもお姉さん系の綺麗な人で、きっと彼氏もいるはず!
この状況はまずい?
「男女二人きりは誤解させます!」
「スーツだと確かにサボりに見えるな。作太、一回帰ったら駅前集合な?」
「そうじゃなくて! デートみたいじゃないかって」
「私はどっちでもいいが、部下を労うつもりだから大丈夫だ。それにカップルに見られて不都合な?」
愛音さんは僕をじっと見る。
そして、肘で僕の脇をぐりぐりと痛めつける。
「ははーん。彼女に見られたら大変だな?」
「いませんよ! 主任の彼氏に見られたらです!」
「煽っているのか。私も独りだが? 分かった」
「何をです?」
「責任取れ、作太。私を馬鹿にした以上、カップルとして私をエスコートしろ。金は私が出そう」
「お金出させたら僕、ちょっとダサくないですか?」
「それもそうだな」
マンションの一室に戻る。
シャワーを浴びるより先にベッドに飛び込んだ。
うつ伏せから膝を立てるように座って、顔を敷布団に押し付ける。
さらに、掛け布団で顔と敷布団の隙間を埋めた。
「う、うああああああああああ!」
僕は叫んだ。
休日、僕の心臓は持つだろうか。
「おお、ひげを剃ったのか?」
駅前にて。
美人上司である愛音さんと待ち合わせた。
「そうですけど。……あ、ああ」
愛音さんは首を傾げる。
か、かわいすぎる! 綺麗すぎる! 格好良すぎる!
憧れの愛音さんは、ジーンズに、胸元にロゴが入った白いシャツを合わせて、薄茶色のコートを羽織っていた。
コートの袖に手を通していない辺りがおしゃれを感じる。
……なお、素人の感想。
「なにぼうっとしてる? あまり眠れなかったのか」
「いいえ」
むしろ目が覚めたというか。
「昼、ゲームセンターに併設されたラーメン屋かハンバーガー屋、どっちがいい?」
「ラーメン?」
「なら、ハンバーガーにしよう」
「え?」
「逆張りも楽しいぞ」
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