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しかしそんな感情も、味気ない飯を口の中に放り込んだ瞬間、どうしようもない虚しさへと変貌していった。こんな飯、何が美味いのかさっぱり分からん。
「なぁ。お前は本当に宇宙人なのか?」
ほんの少し、期待を込めてそう質問した。もしかすると、俺は自殺に成功して、今はあの世にいるのかもしれない。だからこんな意味不明な生命体と一緒に、味気ない白飯を食べているんだ。そう、きっとそうに違いない。
「ハイ!宇宙人です。今日は年に1度の地球偵察にやってきました!」
年に1度の地球偵察……。
聞きなれない用語に、返す言葉を失くしつつ箸を置く。先ほど分け与えた白飯を、目の前の宇宙人とやらはすでに完食していた。
「俺は……まだ生きてるのか」
「ハイ!生きてます!」
予想していた答えに、愕然と肩を落とした。いや、本当はこんなくだらない質問をせずとも分かっていたんだ。
すぐ後ろには倒れた椅子と千切れたベルト。俺は紛れもなく、さっき自殺に失敗をした、情けない男だ。
いや、それも違う。そもそも、こいつが来たから失敗したんだ。首にベルトをかけて、だけど怖くて、足元の椅子を蹴とばせないでいた。そうしたら、戸棚の隙間からこいつがまじまじと覗いていて……。
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