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「藤宮、補習だったんだろ?お前、真面目な割に要領悪いよなぁ」
「悪かったですね!!」
本当に担任なのか疑いたくなる発言。
ムッとして言い返すと、クスッと笑う気配がした。
見上げてみると、目を細め楽しそうに微笑んでいる顔があった。
━━━━ドキッ
心臓の音がうるさく鳴りはじめて、顔に熱が集まってくるのがわかる。
冴えない先生のはずなのに…。
「まぁまぁ、そんなに怒るなよ~可愛い顔が台無しだぞ?」
「なっ…!?」
私の顔を見ると、更に笑みを深めた。
絶対からかってる!!
「あはは、冗談。ごめんって」
やっぱりからかわれた。
悪びれもせず笑っている姿に、怒りを通り越して呆れてしまう。
この人には何を言っても無駄だ。
もう、帰ろう。
「もう帰ります!!」
クルッと方向転換すると後ろから呼び止められた。
「おぉー!あっ、藤宮」
「何ですか!?」
まだ何かあるのかと、不機嫌丸出しで返事をして振り返ると思ったよりも近くに先生の顔があって驚いた。
いつの間に近づいて来ていたんだろう。
びっくりしている私にお構い無しに耳元で囁かれた言葉に私は固まって動けなくなってしまった。
「煙草のことは二人だけの秘密な」
ふわっと香る苦い匂いと共に顔が離れると、人差し指を口に当てながら、シッーとする仕草はとても三十代後半とは思えないほど可愛らしくて、不覚にもときめいてしまった。
「バレたら先生、怒られちゃうからさ。怖いんだよねぇ教頭先生」
そう言って、先生はいつもの調子で笑っている。
なんだか熱い…。顔も体も熱くて仕方ない。
きっと、これは夏の暑さのせいだ。
「……嫌です」
私はそれだけ言うと、火照る頬とドキドキする鼓動を無視して足早にその場を後にした。
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