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小さい頃は、みんなよりも先を行っていた。自分のペースで、やりたいように。ある日、自分がみんなと違うと気づいた。それがおかしいことのように感じて、みんなに合わせて歩調を緩めた。
なのに。
いつの間にか追い越されて、みんなに置いてかれていた。
待って。
私はみんなを気遣ったのに、みんなは私を気遣ってくれないの? なんで?
理不尽な怒りもいつしか勢いを弱め、ついに私は足を止めた。
背後から、夜の闇が迫ってくる。みんなは談笑しながら、明かりのある方に向かって行く。だけど、私は動けない。
みんなの背中はとっくに見えなくなって。
いつしか、私は独り、闇の中でうつむいていた。
淡々とした、無機質な日々。
個性なんてひた隠しにして、機械のようにやるべきことをこなす。
グループの中にいても、私だけ輪の外にいるようだった。誰も私に話を振らない。みんなの会話を盗み聞きしているようで、申し訳なかった。
ある日、私はあの人達に出会った。そのうちの数人からは、私と似た気配がした。
それから、私の世界には光と色が戻ってきた。
違う。
私をケンカに巻き込んだ挙げ句、いつの間にか私だけを悪者にして全員で責め立ててきた近所の子達とは。
違う。
私を悪い遊びに誘って、断ったら『面白みのない子はキライ』って睨んできた同級生とは。
違う。
私をムリヤリ従わせて笑い者にした、下級生二人組とは。
あの人達は、何もかもが、違う。
キラキラした、「青春」と言われるもの。どうあがいたって、私には手の届かないのだと思ってた。それが、思いがけず手に入った。
最初は戸惑って、楽しむという行為に罪悪感があったけど。それも今は、ほとんどない。
過去を抜きにすれば、私はこの上なく幸せ。
もちろん、過去との縁を完全に断ち切ることはできない。私はこれからも、思い出して苦しむだろう。
ただ、過去があって今の自分があると思えば、受け容れて耐えるしかない。
もう、過去には戻れないし、戻りたくもない。
私は今を生きる。そう、決めたんだ。
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