佐野兄

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「悠成!!お前!」 「わあっ!っんだよ!いちいち触ってくんなよ!ほんと、頭イカれたんじゃねぇのか?」 「今日を楽しみにしてたんだよな?それなのに、柚紀君の体調を考えて自制出来るなんてお前……いつの間にそんな立派な男に成長してたんだ……」 なんか…凄い感動してる…… 「いい加減にしろよ!訳分かんねぇな!柚紀、行こうぜ」 「あの……お騒がせしました。お邪魔しました」 「うん。柚紀君。体、大切にね……」 「ありがとうございます……」 「はぁ……なんか、悪い柚紀。遼成の奴、いつもはもっと、愛想がなくて、放っておいてくれって感じなんだ。なんだって今日に限って、あんなに絡んできたんだ?柚紀、なんか、そういう属性持ってんの?」 「よく分かんないけど、佐野に聞いてたお兄さんとは違って、凄く優しくて、心配してくれて、やっぱり佐野のお兄さんだなって思ったよ」 「は?それは幻想だな。本当の遼成は、そんなんじゃねぇ。今日のは幻だ」 「そんな事ないよ。話はよく分かんなかったけど、なんか必死に俺の事心配してくれてるのは分かった。佐野と同じだよ」 「はぁ……柚紀に言わせたら、誰でもいい奴になるんじゃねぇか?」 「きっと、兄弟だけで居ると気付かない部分があるんだよ。お兄さんも、俺を心配してくれてる佐野を見て、きっとびっくりしたんだよ。なんか凄い感動してたもん。佐野のいいとこ知ってもらえて良かった」 「そうか?まあ、柚紀が嫌な思いしてないんならいいだけどな」 「うん。全然。それに、変わってるのは俺の家族だけじゃないんだって思えて、少し嬉しかった」 「ああ…変わってる内容が、だいぶ違うけどな」 「柚紀!」 「おはよう、佐野。おとついは、どうも……」 「お前……兄貴と一体、どんな話したんだ?」 「え?どんなって……佐野は凄くいい奴で、助けられてるみたいな話したけど?」 なんで佐野焦ってんの? 「なんか、あれから兄貴変なんだよ。俺がしっかり佐野家を守ってくから、お前は自由に生きろだの、柚紀が遊びに来る時は、家空けてやるから言えだの……とにかく、今まで言われた事ないような事すげぇ言ってきて、気持ちわりぃんだよ。それに……とんでもない物渡された」 気持ち悪い? とんでもない物? 「……よく分かんないけど、佐野の事思って言ってくれてるんだから、いいんじゃない?俺をきっかけに、優しさ隠さないで見せてく事にしたとか…」 「あ?そんな奴じゃねぇんだよ……大体、柚紀と何の話したら、俺にコン……あんな物渡してこようと思うんだ?」 「喧嘩が増えるとかなら困るけど、佐野がお兄さんと仲良くなったんなら、俺も嬉しいよ。ところで、佐野……」 「ん?……なっ!何?!」 鼻…腫れは引いたけど、まだ少し赤い 「それ!」 「え?どれ?」 「その近付くの!禁止!!距離感!お前は基本的に距離が近い!」 「そうかなぁ?」 「そんな事ないわ!近い距離大いに結構!柚紀君、どんどん近付いて!」 いつもの女子達だ… 「だってよ?佐野。もっと近くても大丈夫だって」 「あ…あいつらの言う事は聞くな!」 あ……この、少し恥ずかしそうな顔 やっぱり、お兄さんに似てる 「や……やめろ!その距離で、見上げて微笑むな!」 ほら、ほんとは優しいのに、それを隠してるみたいな… 佐野も、佐野のお兄さんも、隠し過ぎて、どんなに優しいか忘れちゃってただけなんだ 少しずつでも気付いてってくれるといいな 「……ね?佐野」 「な……何が、ね?だ!俺を見上げるな!小首を傾げるな!!」
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