6人が本棚に入れています
本棚に追加
/95ページ
「悠成!!お前!」
「わあっ!っんだよ!いちいち触ってくんなよ!ほんと、頭イカれたんじゃねぇのか?」
「今日を楽しみにしてたんだよな?それなのに、柚紀君の体調を考えて自制出来るなんてお前……いつの間にそんな立派な男に成長してたんだ……」
なんか…凄い感動してる……
「いい加減にしろよ!訳分かんねぇな!柚紀、行こうぜ」
「あの……お騒がせしました。お邪魔しました」
「うん。柚紀君。体、大切にね……」
「ありがとうございます……」
「はぁ……なんか、悪い柚紀。遼成の奴、いつもはもっと、愛想がなくて、放っておいてくれって感じなんだ。なんだって今日に限って、あんなに絡んできたんだ?柚紀、なんか、そういう属性持ってんの?」
「よく分かんないけど、佐野に聞いてたお兄さんとは違って、凄く優しくて、心配してくれて、やっぱり佐野のお兄さんだなって思ったよ」
「は?それは幻想だな。本当の遼成は、そんなんじゃねぇ。今日のは幻だ」
「そんな事ないよ。話はよく分かんなかったけど、なんか必死に俺の事心配してくれてるのは分かった。佐野と同じだよ」
「はぁ……柚紀に言わせたら、誰でもいい奴になるんじゃねぇか?」
「きっと、兄弟だけで居ると気付かない部分があるんだよ。お兄さんも、俺を心配してくれてる佐野を見て、きっとびっくりしたんだよ。なんか凄い感動してたもん。佐野のいいとこ知ってもらえて良かった」
「そうか?まあ、柚紀が嫌な思いしてないんならいいだけどな」
「うん。全然。それに、変わってるのは俺の家族だけじゃないんだって思えて、少し嬉しかった」
「ああ…変わってる内容が、だいぶ違うけどな」
「柚紀!」
「おはよう、佐野。おとついは、どうも……」
「お前……兄貴と一体、どんな話したんだ?」
「え?どんなって……佐野は凄くいい奴で、助けられてるみたいな話したけど?」
なんで佐野焦ってんの?
「なんか、あれから兄貴変なんだよ。俺がしっかり佐野家を守ってくから、お前は自由に生きろだの、柚紀が遊びに来る時は、家空けてやるから言えだの……とにかく、今まで言われた事ないような事すげぇ言ってきて、気持ちわりぃんだよ。それに……とんでもない物渡された」
気持ち悪い?
とんでもない物?
「……よく分かんないけど、佐野の事思って言ってくれてるんだから、いいんじゃない?俺をきっかけに、優しさ隠さないで見せてく事にしたとか…」
「あ?そんな奴じゃねぇんだよ……大体、柚紀と何の話したら、俺にコン……あんな物渡してこようと思うんだ?」
「喧嘩が増えるとかなら困るけど、佐野がお兄さんと仲良くなったんなら、俺も嬉しいよ。ところで、佐野……」
「ん?……なっ!何?!」
鼻…腫れは引いたけど、まだ少し赤い
「それ!」
「え?どれ?」
「その近付くの!禁止!!距離感!お前は基本的に距離が近い!」
「そうかなぁ?」
「そんな事ないわ!近い距離大いに結構!柚紀君、どんどん近付いて!」
いつもの女子達だ…
「だってよ?佐野。もっと近くても大丈夫だって」
「あ…あいつらの言う事は聞くな!」
あ……この、少し恥ずかしそうな顔
やっぱり、お兄さんに似てる
「や……やめろ!その距離で、見上げて微笑むな!」
ほら、ほんとは優しいのに、それを隠してるみたいな…
佐野も、佐野のお兄さんも、隠し過ぎて、どんなに優しいか忘れちゃってただけなんだ
少しずつでも気付いてってくれるといいな
「……ね?佐野」
「な……何が、ね?だ!俺を見上げるな!小首を傾げるな!!」
最初のコメントを投稿しよう!