トゥルーカラーズ

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「あら? あなたの身体、色が変わってきているみたい」  桜色と灰褐色が混ざったような色が、緑がかってきた。  ふたりは舞い散る桜の花びらを浴びながら、ただじっと、変化を待っていた。  しばらくすると、少年の身体は彼女のような、黄緑色に染まった。  それは少年のもとをすぐに去った、あの少女に近しい色だった。 「きれいよ、カエルさん! ああでも、どんな色を纏っても、どうかその心の純粋さを忘れないでいてね」 「忘れないよ、きみのことも。今までありがとう!」  少年が仲間のカエルをさがすため、ついに旅立つときがやってきた。  彼女は見送りに、少年とともに枝を降りた。  満開の桜のその下で、ふたりは別れを惜しむ。  彼女は「さよなら」、ひときわ大きくさえずった。 「さよなら!」  少年も大きく鳴いた。  またね、ではなくて、さよなら……。  少年は遠くなっていく。  地面を歩く彼を見つめていても、その身体が土の色に変化する様子はなかった。 「でもね、カエルさん。あなたは何色でも美しいのよ。真剣に自分をさがしながら、私を全力で守ってくれた、あなたは……」  桜の花が咲くたびに彼女は、あの少年のことを思いだす。  桜の蜜を吸いながら、なぜかどうしようもない、せつなさに包まれて――。                                                                   了
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