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「そう泣かないで。私にカエルさんのほんとうの色はわからないけれど……あなたが何色でも、あなたはあなたよ」
「オレが、何色でも?」
「ええ。あなたの色は、あなたの心の中にあるのよ。外からは見えないの。見た目がすべてじゃないわ」
「……ありがとう、メジロさん。オレ、なんだか自信がついてきた!」
うれしさから少年は、ケロケロケロケロ、鳴きだした。
その声につられて、一匹のカエルがやってきた。
どうやら少女らしいと、今さっき鳴いた少年は思った。
彼とおなじくらい、小さなカエルだ。
ただちがうことは、やってきたカエルは、緑色をしているということ。
少年が、少女のカエルを見つめた。
どうあいさつをしようか迷っていると、少女は、ふんと、鼻息も荒くいってしまった。
「オレ、嫌われた……あの子とおんなじ色じゃないから、嫌われたんだ!」
「ああ、もう、泣かないの! ちがう色だから、ちょっと脅えちゃっただけよ。あなたの素晴らしい心の色までは、あの子には見えなかっただけよ」
「でもさ、木の枝や桜の花の色にコロコロ変わっちゃうなんて、オレはいったい、何色でいたらいいんだろう。どうしたら、ほかのカエルと仲間になれるんだろう。やっぱりさっきのあの子みたいな色じゃないと、ダメなのかなあ……?」
「そうねえ。たとえば、私の羽の色をまねしてみるのはどうかしら? さっきのカエルさんと、よく似た色よ。きっと、お仲間になれるわ」
「そんなにきれいな色、なれるかなあ」
少年はしげしげと彼女を見たあと、大きくうなずいた。
「オレ、メジロさんみたいになれるように、がんばってみるよ」
それから少年は桜の木の枝で、彼女に寄りそった。
じっと、その羽を見つめる。
「きみの羽は、ほんとうにきれいだなあ。風がわたる、緑の絨毯みたいな、田園風景を思いだすよ」
少年にそう言われて、彼女の心は明るく華やぐ。
「ありがとう。あなたの心は、雨上がりの虹のような色をしているわ」
「それって、どういうこと?」
「色とりどりで、素敵ってことよ」
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