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これを聞いた少年は、冷たい自分の身体に、あたたかな血が通っていくような感覚がした。
「こんなオレをきれいだと思う、きみの心がいちばんきれいなんだよ、きっと」
照れながらもそう返した。
彼女は恥ずかしくて、身体がどんどん熱くなる。
だから隣に座る、冷たい身体の少年といると、とても心地がよく感じた。
もしも少年の身体が、自分とおなじような色……あの緑のカエルたちの色になってしまったら、きっと彼はここから旅立ってしまうだろう。
おなじ種族の仲間をもとめて。
彼女は少年との別れを思うと、辛くなってしまうのだった。
だから青空を見上げた。
視界にはうすいピンク色の桜の花が映り、それはとてもおいしそうだった。
寄りそっていると、一羽の真っ黒いカラスが襲いかかってきた。
彼女が逃げようとしても、少年は恐怖で凍りついている。
私がひとりで逃げたら、このまま彼がやられてしまう、そう思った刹那、少年は彼女の前に立ちはだかり、かばいながら必死に大声をだした。
「おい、こらっ! オレたちは食いもんじゃない、あっちへいけっ!」
カラスは少年を珍しそうにながめたあと、「気味の悪い色したヤツなんか食えるもんか」、そう吐き捨てて飛んでいった。
はらはらと、桜の花びらが舞い散っている。
「カエルさん! 助けてくれて、ありがとう」
彼女は心からお礼を言った。桜色に頬が染まるような気がしながら。
「いや、オレにできる恩返しは、これくらいだから……」
少年は力なく笑った。
やっぱりオレは気味の悪い色なんだ……どうしたらきれいになれるんだろう……、そう、途方に暮れながら。
そんな少年を見て、彼女は気づいた。
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