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「舞は、恋してるの?」
出会ってから舞の浮いた話は一度も聞いたことがなく、せっかくなので私は話題を振った。
「ううん、私は全然!!」
「本当かあ?」
疑いの目線を送ると、舞は対抗と言わんばかりに見つめ返してくる。
5秒ほど見つめあったあと、私は諦めてすっと視線を外した。
「そっか」
舞が、体育祭のとき私に言ってくれた言葉。
『辛くなったら辞めたくなるよ』
その言葉がどうしても、軽い言葉に思えなくて。
もしかしたら、辛い恋をしたことがあるのかなあって思っていたんだけど。
考えごとをしているのが伝わったのか、舞は、遠慮がちに口を開いた。
「昔の話、なんだけど」
控えめな口調に、私はストローを触る手を止める。
「引かないでね……?」
心配そうな前置きをされ、私は少しだけ体を強ばらせた。
小さな咳払いの後、舞は遂に口を開く。
「私、アイドルに、恋してたことがあって」
予想だにしない言葉が飛び出し、私は目を丸くした。
少女漫画が大好きな私だから、想像力は一気に膨らんだけど、何も言わず静かに待つ。
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