恋しいのか、それとも、寂しいだけか

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俺は仕事を終えると、楽屋に誰も居ないことを確認して、優馬に電話をかけた。 トゥルルル............ 「もしもし」 優馬は5コール目で電話に出た。 「今、大丈夫か?」 「かけてから聞きます?」 「それもそうか。」 「用件は?」 「今夜、会いたい。」 「俺は会いたくないです。」 優馬の返事に俺は戸惑った。 初めて、俺から会いたいと言った相手に断られた。 でもここで引き下がるような俺ではない。 「今から行くから、家の住所送って?」 「あの、俺の話聞いてましたか?」 「聞いてた。」 「あなたって人は、ここまでくると清々しいですね。大学の課題があるんです。明日までの期限なので、真守さんの相手をしている暇はないですがそれでも良ければ。」 「優馬の邪魔はしないよ。」 「分かりました。家の住所をメールで送ります。」 「ありがとう。」 すると、優馬はすぐに電話を切った。 彼の心が読めない。 俺とセフレになったはずなのに、あんなにも素っ気ない態度をとるなんて。 数分後、優馬からメールが届いた。 俺は住所を確認すると、マネージャーの車に乗り込んだ。 「直帰でいい?」 「はい。」 「最近、どうなの?」 「どうとは?」 「浮いた話を聞かないから。」 「俺もそろそろ落ち着こうかなと。」 なんて、俺は思ってもいないことを口に出した。 今、マネージャーに優馬との関係を知られると面倒だ。 「私もそれを願ってるわ。あなたが週刊誌に撮られる度、どれだけ胃が痛いか...」 「いつもすみません。」 「そんな綺麗な顔で言われたら、怒れないじゃない。」 マネージャーと話していると、車は俺のマンションに到着した。 「明日はオフで、明後日、朝8時に迎えに来るわ。」 「分かりました。お疲れ様でした。」 俺は車から降りると、足早にエントランスに向かった。 そして、マネージャーの車が去っていくのを確認して、駐車場へと急いだ。
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