愛か恋か、それとも、欲か

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愛か恋か、それとも、欲か

俺は優馬に抱かれてからも、彼との関係を続けていた。 決まって連絡は俺から。 密会場所は優馬の部屋。 だが、今夜はいつもと違う。 俺たちは初めて、外で食事をしていた。 場所は俺が行きつけの焼肉屋。 完全個室で、セキュリティーも万全。 お忍びで芸能人も通う隠れた名店だ。 「外で食事しようなんて珍しいですね。」 「たまにはな。」 「この店はよく来るんですか?」 「ああ。わりと。」 「へぇ。俺だけじゃないのか。」 「え?」 「どうかしましたか?」 「いや、なんて言うか...そういうこと初めて言ってくれたから。」 「そうでしたっけ?」 「そうだよ。」 俺は優馬を見つめた。 見れば、見るほど、彼は俺の好みの男だ。 優馬のことを好きになれたらどんなにいいか。 だけど、彼はそれを望んではいないだろう。 「俺、結構、嫉妬深いんです。」 「そうなのか?意外だわ。」 「例えば、真守さんと付き合ったら、あなたがファンにかける一言に全て嫉妬します。」 俺は静かに優馬の話を聞いていた。 「ファンサービスなんてクソ喰らえだ。俺の真守さんを好きと言う奴は消えればいい。」 「なかなか過激だね。でも嫌いじゃない。」 「だから、真守さんは俺と付き合わない方がいいってことです。嫉妬束縛が強い恋人がいるのに、アイドルはやりにくいでしょ?」 これは優馬の事を好きになるなという俺への忠告なのか? だとしたら、完全に逆効果だ。 「俺に優馬のことを好きになるなってことが言いたいのか?」 「というか、俺たちはセフレが合ってるってことです。」 「俺の事を抱いておいてよくいう。」 俺は優馬の隣の席に移動した。 「優馬こそ、俺の事が気になってるんじゃないのか?」 「寝言は寝て言ってもらえますか?」 「おお、相変わらず厳しいね。だったら、そんな顔したらだめだろ。」 俺は優馬の唇にそっとキスをした。 「待って//誰か来たらどうするんですか?///」 「誰も来ないよ。何の為の個室だよ。優馬が声を出さなければ大丈夫。」 「あなたはずるい//」 「でも好き?」 俺は優馬に問いかけた。 しかし、優馬は断固として答えなかった。 「まぁいいよ。俺は欲しいものは必ず手に入れないと気が済まないから。」 「なんで俺なんですか?//」 「気づいたら?ってやつ。理屈とかどうでもいい。」 「あなたって人は...」 「それよりもまず食べようか。腹減った。」 「切り替え早すぎでしょ。」 「俺の取り柄なんで笑」 俺は優馬に笑いかけた。 愛だの、恋だのくだらない。 今でもそう思う。 だけど、俺の本能が優馬を欲している。 彼に惹かれていく自分を俺は自嘲した。
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