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「……あれ? おいしい」
「……うん。かなりの美味だね」
「ピリリとした辛みと酸味のバランスがいいな。オムレツの中の黒くて固い食材から、いい油のだしが出ているぞ」
「アリスこれ好きー」
「ひょっとして……奇跡のレアアイテム、三ツ星美少女料理引いた?」
不安が、ぱあっと消し飛ぶ。
それから猛烈な食欲が湧き、これまでの空腹感を埋めるべく、私たちは目の前のオムレツを猛スピードで胃にかきこんだ。
ミーナさんが、ホッとした顔を見せる。
「よかったー、聖女様の口に合うか心配したの! イーク村特産の郷土料理、ゲジゲジオムレツ」
「……へ?」
「イークキョダイムドククロゲジゲジっていうの。他に食材ないからタイラーノさんに山で狩ってきてもらったわ。ピンクの粒は卵で、野草は巣材。茶色いソースは絞った新鮮な体液なのよ」
ミーナさんがニッコリ笑って、大きな麻袋の中から消防ホースのような太さで、無数の脚がわしゃわしゃ動く黒い虫の頭を、わしづかみに取りだした。
「味じゃなくて食材トラップの方か――っ!!!」
「でもお味、いいでしょ?」
いいか悪いか、と言えば確かに三ツ星極上だったが……
そこでアリスが無邪気に手を挙げた。
「ミーナちゃーん。ムドクってことは、ドクの子もいるの?」
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