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「ドク? いないわよ、そんなゲジゲジ」
……ほっ。最後のトラップ回避。
「モードクはいるけど。食べたらはらわたが焼ける奴」
「だめじゃんそれ! ちゃんと区別ついてんだろうな!」
「大丈夫大丈夫。とーってもよく似てるけどムドクは尻尾の角二本、モードクは三本だから。イーク村育ちなら子供でも間違えないわ。ねえ、捕ってきたタイラーノさん」
「私は西の洞窟出身だけど」
「あ。そうでした」
「!!!」
「その区別の話、初耳ね」
「袋の中の子は……やだ、みんな角三本だわ」
「やっぱ料理ミミックだーっ!!!」
私たちは今食べた料理を戻すため、一斉にトイレへと突進した。
◇
結論から言えば、料理に供されたのは偶然ムドクだったらしい。ピートの罠探知魔法でわかっていたはずだが、完全に冷静さを失っていた。
そのまま全員が気色悪さで床につき、聖女の回復を願う吟遊詩人の新曲「フーセツ流れ旅サンババージョン」がお経のように延々リピートされる村の病室で、私たちは黒く蠢く悪夢を見続ける羽目になった。
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