週末異世界Ⅳ ~聖女様と空腹のダンジョン

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「ドク? いないわよ、そんなゲジゲジ」 ……ほっ。最後のトラップ回避。 「モードクはいるけど。食べたらはらわたが焼ける奴」 「だめじゃんそれ! ちゃんと区別ついてんだろうな!」 「大丈夫大丈夫。とーってもよく似てるけどムドクは尻尾の角二本、モードクは三本だから。イーク村育ちなら子供でも間違えないわ。ねえ、捕ってきたタイラーノさん」 「私は西の洞窟出身だけど」 「あ。そうでした」 「!!!」 「その区別の話、初耳ね」 「袋の中の子は……やだ、みんな角三本だわ」 「やっぱ料理ミミックだーっ!!!」  私たちは今食べた料理を戻すため、一斉にトイレへと突進した。            ◇  結論から言えば、料理に供されたのは偶然ムドクだったらしい。ピートの罠探知魔法でわかっていたはずだが、完全に冷静さを失っていた。  そのまま全員が気色悪さで床につき、聖女の回復を願う吟遊詩人の新曲「フーセツ流れ旅サンババージョン」がお経のように延々リピートされる村の病室で、私たちは黒く蠢く悪夢を見続ける羽目になった。
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