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「わかりました。私は聖女、必ず食料を奪い返します。すぐ出発しましょう」
「お宿で休まれずに? 素晴らしい御心です!」
「ですがアンデッド軍団は強い。激しい抵抗も予想されます。これは仮の話、万一の万一ですが……すべてのお肉を持ち帰れず、ちょーっと量が減っていたとしても許してください」
「もちろんです、聖女様」
よーし、商談成立。ミーナの私腹を奪い返し村人に分け与えるなら、少しくらいいただいても罰は当たるまい。
「ピート、道中は魔力をセーブしながら戦ってください。この戦い、ラスボスに炎魔法が必要という神の声が胃袋から……じゃなかった、天から聞こえます」
「わかった!」
「ウォルフは聖なる包丁を一本用意。最終決戦に備え道中のアンデッドには決して使わず、衛生的な状態で持ち歩くこと」
「了解だ」
「アリスは塩、こしょう、お醤油、赤ワインとにんにくを準備して。どれもアンデッドに効果的と聞きます。調合して火にかけ、聖なるタレを作りましょう。これも最後の切り札、道中の雑魚に一滴たりとも使ってはなりません」
「アリス、絶対に守る!」
「アンデッドと戦う戦術を、一瞬でこんなに思いつくとは! やはり聖女様はただ者ではありませんね」
ミーナがうなずき、鳥人ホー君が「ホー」とつぶやく。
「ところで聖女様は、お腹がお空きのご様子。教会にまだ大根の葉や小松菜、粟などわずかな食料はありますが、先に食事されますか?」
「そんな鳥のエサ、じゃなかった村の貴重な食べ物はいただけません。私は大丈夫、慈悲の心で村人にお分けください」
高級お肉に空腹は最良のソースなのだよ、はっはっは。
「ではお戻りになるまでの間、私たちは野山や近隣の村から食材を調達します。戻ったら歓待の宴を開けるよう調理しておきます」
「お心遣い感謝します。それでは出発しましょう」
こうして私たち四人は意気揚々とダンジョンに向かった。
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