週末異世界Ⅳ ~聖女様と空腹のダンジョン

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「ぜえ、ぜえ、ぜえ」  一時間後。私はダンジョンで、かつてない苦境にあえいでいた。  襲いかかるアンデッドの群れは、魔王を倒した四人のレベルの前ではスライム同然。ウォルフの剛力、ピートの攻撃魔法、アリスの浄化魔法と私の聖剣で、ほぼカタがつく。  問題は、ダンジョンにかかった呪いの方だ。  一歩進むごとに空腹感が増す、恐ろしい呪いだった。アンデッドは食事をしないし、飢えを戦闘力にするくらいだから問題ない。    毒の呪いなら治療、体力を奪う呪いなら回復。だが空腹の苦痛には打つ手がなかった。空腹は食料があれば容易く解決するから、解除魔法など研究されていない。最高レベルの浄化魔法も無力だ。 「ボスを……倒すしか…ないわ……」  歩くだけで目が回る回廊を、聖剣を杖代わりに刺しながら進む。みんな腹は減っているが、昨日の焼肉風定食(※注。もやしご飯)から丸一日断食の私とは比較にならない。  さらに一時間、無限に感じた探索の末に、骸骨王の居室にたどりつく。私は重い扉に手をかける気力がなく、代わりにウォルフが押し開けた。  部屋の奥、石の椅子に座る白骨の男。その後ろに「食糧庫」と書かれた氷の扉があった。 「よく来たな聖女レイナとやら。まずは我が高説を心して拝聴せよ。我を魔王や狸王と同……」 「ホーリー・ブレイドオオオッ!!!」  御託を聞く余裕もない私が最後の力で聖剣を振り下ろすと、白い閃光を正面から食らった理科室ガイコツ野郎は「ぐわあああ」と断末魔の声を上げて崩れ去った。
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