週末異世界Ⅳ ~聖女様と空腹のダンジョン

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「ねえ玲奈。大学に近い焼肉『牛パク』が学生割引で週末千円食べ放題なの! あす夜に食べに行こっ!」  きらきらの瞳で誘ってきたのは、大学ゲーム同好会の友人・晴海だ。  私の先月のバイト代は、新作アニメBDの初版特典付き全巻セットで底をついた。バターで炒めた大量もやしに焼肉ダレをかけご飯といただく自家製夜食「焼肉味定食」が四日目を迎え、脳と胃がだまされていることに気づきハンガーストライキを起こし始めた矢先だった。  翌朝と昼の食事はもちろん全抜き。空腹ソース満タン状態、うきうきと牛パク入口に立って扉を開いたら、「ちりん」という音と共になぜか異世界の教会にいて呆然とした。  私は週末金曜日、不定期に異世界大陸に飛ばされ、チート魔力で「聖女」と崇められる特殊能力がある。待っていたのは狼戦士ウォルフ、若き天才魔法使いピート、幼女治療師アリスのいつもの面々。  に、加えてなぜか雪の魔女タイラーノ、鷹ファンのフクロウ人間ホー君、エルフ美少女ミーナまでいた。 「またイーク村かよ……」  前回飛ばされたイーク村には悪夢のような雪の記憶しかない。だけど今の季節は夏で、悪魔とお笑い界が魔界融合したような忌まわしい雪像ゴーレムは溶け、ひなびた風光明媚の村に戻っていた。 「聖女レイナさま! わが村に再びご光臨いただくとはミーナ光栄です! 村人の危機をお救いください」  村長のミーナは笑顔がかわいいエルフだが、かなりの食わせ者であることは前回の騒動で学んでいる。 「私は聖女、村人の苦境とあれば放置はできません。お話を聞きますが、その前にご飯を一杯いただけると……」 「ありがとうございます、聖女様! まず事の発端は二か月ほど前、村にあやしげな格好で二人組の吟遊詩人が訪れました。その詩がですね……」 「聞いちゃいねえ……」
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