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「う゛う゛う゛ぁあぁぁ……」
カーテンを閉め切った部屋で、ぼくは呻いた。
とても我慢できない惨めな気分。
涙が流れ落ちる。
そうだ、今日だ。
今日という日、ぼくはあいつを殺そう。
もう我慢はよそう。
あいつを殺す。
必ず。
鏡の中の自分に、ぼくは誓った。
そのとたん、とても心が晴れた気がした。
家の外に出た。
初冬の空は空気が澄んでいて、見上げると、とても気持ちいい空が広がっていた。
美しい空だ。
なんて美しい空だ。
電柱も電線もひっくるめて、美しいと感じた。
完璧な日本の住宅地の空だ。
まるで、今のぼくの心の様だ。
こんな気持ちの良い日に、ぼくは人を殺す……それでいいのだろうか?
「よりによって、こんな美しい空の日に人を殺すというのはどうなんだろう。空はこんな美しいのに」
ぼくは声に出して、自分に問いかけてみた。
「いや、こんな美しい空だからこそ絶対に今日殺す。今日殺さなかったら、明日は殺す気が失せているかもしれない。ぼくは意思が弱いから」
だから今日殺す。
ぼくは、あいつがいそうな場所を探し回った。
公園。
コンビニ。
駐車場。
傍目には、ぼくは、散歩している様に見えるのだろうか。
物騒なモノを持っているけど。
とても心地よい風が吹いた。
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