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「ヒヨリさんの返事は急ぎませんので」
「でっ、でも……」
「ヒヨリさんの都合のいい時に……そうですね、総合的にじっくりと考えてお返事をください」
お辞儀をされ、にっこりと微笑まれる。
イズーの態度は、どこまでも紳士だった。
淡いブルーグレイの瞳。吸い込まれていきそうな浅い海の優しい色。
ヒヨリは知らず知らずのうちに頬を赤らめていた。
男の人からの愛の告白なんて彼女としてみれば生まれて初めてだったから。遊び相手はいつも、リリーだったから。
「ヒヨリさん、そう言えば」
「なあに? イズー」
ポンと、ヒヨリの肩に手を置いて、イズー。
「泣かないで、とリリーが言っていましたよ」
優しい瞳で。彼は言う。
「寿命は誰にでもあるものです。リリーはそれを無事に終えました。あなたにも無事に寿命を終えて欲しいとリリーは願っています」
「うん、そっか……」
「ヒヨリさん」
「うん?」
イズーは言葉を続ける。
「リリーは本当に幸せでしたね、ヒヨリさんのような方と一緒にいられて」
そこで、ヒヨリはまた涙腺が崩壊した。
「リリー……」
ヒヨリは思う。
(私もリリーと同じ場所へ、そっちへ行きたいと願った時がある)
それを思い出して彼女は泣きながら涙を流しながら少し笑った。
イズーは、ヒヨリの涙を優しく指でそっと拭う。
彼は何か不思議な力を持っているような、近くにいると癒されるような、そんな雰囲気をヒヨリは感じとっていた。
何だか、こう、温かい気持ちになると。彼女自身が正直、落ち着くのがわかった。
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