05 夏の海の初デート

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05 夏の海の初デート

 日差しが鋭い真夏の暑いある日。雨が強く降る、そんな蒸し暑い日の午後だった。  ヒヨリの友達、愛犬のリリーは寿命を終え、雨の中無事に天国へと旅立った。  とても悲しい別れであったが、そこには新しい出会いもあり。  ヒヨリは、あれから心に誓っていた。 (もう私は泣かないよ、リリー。リリー、リリー、天国で元気にしていますか? 私は今、一応元気に暮らしています)  彼女は椅子から立ち上がり自室の窓を開け空を見上げる。  すると真夏の太陽と白い雲がヒヨリにはとてもキラキラと輝いて見えた。  目をすぼめて景色を眺め、おもむろにつぶやく彼女がそこにはいた。 「空が青くて深いなあ」  なんとなくそう思った。空がとても深い、と。  そうして、しばし佇んだ後ヒヨリはいつものように机の前に移動し静かに本を読みだした。日課だった。 (そろそろかな)  しばらくしてから。本を閉じ、彼女が、ふと思う。 (そろそろよね)  すると、どこからともなく部屋にイズーの元気な声が響いて。  彼のヒヨリを呼ぶ声が家にやって来た合図だ。 「ヒヨリさん! お待たせしました」 「イズー、いらっしゃい」 「今日はこれから外での初デートですね」 「うん、そうだね」 「僕は、今日という日をとてもとても楽しみに待っていました!」  イズーはにっこりと微笑み、ヒヨリはその表情を見て、ふと思う。 (イズー、あなたに出会ったのは偶然? それとも必然? 私にはよくわからないわ……)  そうヒヨリが物思いにふけっていたらイズーが彼女の顔を覗き込んで話しかけてきていた。  とても真剣な表情である。
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