05 夏の海の初デート

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「ヒヨリさん」 「ん? なあに、イズー」 「ちょっと移動しましょうか」 「う、うん」  海から出て人影もまばらな大きな岩の裏の砂浜に移動し二人、足を止める。 「ヒヨリさん」 「どうしたの?」 「ええっと、ですね」  日差しが熱かった。  ヒヨリは掌で顔に影を作りイズーの方をじっと見つめた。  ザザーン、ザザーンと、波が白い飛沫をあげている。  とりあえず波打ち際に二人座りこみ、じっくりと話をする体勢にもっていった。 (どうしたんだろう、イズー。話しかけてきたのに突然黙ってしまって)  ヒヨリはそんなことを考えながら俯いて波打ち際を見ていたら、突然ひんやりとしたオレンジジュースが頬に当てられた。  当然、冷たかった。 「ひゃっ!」  振り向けば、いたずらっ子のような表情をしたイズーがいた。 「イズー……!」 「ヒヨリさん、油断大敵ですよ。敵に絡まれたらどうするんですか」 「敵って何よ! もう、イズーったら!」  渡されたオレンジジュースを受け取りながらヒヨリがそう言うと、イズーはどこかホッとした表情をしていた。  たまに何を考えているのかわからなくなるイズーである。  ちょっとだけヒヨリは不安になった。
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