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「ヒヨリさん」
「ん? なあに、イズー」
「ちょっと移動しましょうか」
「う、うん」
海から出て人影もまばらな大きな岩の裏の砂浜に移動し二人、足を止める。
「ヒヨリさん」
「どうしたの?」
「ええっと、ですね」
日差しが熱かった。
ヒヨリは掌で顔に影を作りイズーの方をじっと見つめた。
ザザーン、ザザーンと、波が白い飛沫をあげている。
とりあえず波打ち際に二人座りこみ、じっくりと話をする体勢にもっていった。
(どうしたんだろう、イズー。話しかけてきたのに突然黙ってしまって)
ヒヨリはそんなことを考えながら俯いて波打ち際を見ていたら、突然ひんやりとしたオレンジジュースが頬に当てられた。
当然、冷たかった。
「ひゃっ!」
振り向けば、いたずらっ子のような表情をしたイズーがいた。
「イズー……!」
「ヒヨリさん、油断大敵ですよ。敵に絡まれたらどうするんですか」
「敵って何よ! もう、イズーったら!」
渡されたオレンジジュースを受け取りながらヒヨリがそう言うと、イズーはどこかホッとした表情をしていた。
たまに何を考えているのかわからなくなるイズーである。
ちょっとだけヒヨリは不安になった。
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