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06 とびきりサプライズ
ヒヨリはイズーの背中を押して笑顔で仕事に送り出した。はずだった。はずだったのだ。しかし。
海水浴からの帰り道。
水着から服に着替えて二人並んで歩いていた。
気づけばもう時間が結構経ってしまっていた。やや真上にあった太陽は傾いて水平線へと沈みそうになっている。
空がじわじわと橙色に輝き始めていて、見ればとてもとても綺麗な鮮やかな空の色になっていた。
「じゃっじゃあ、見送りはここでいいよイズー。お仕事行ってらっしゃい」
「はい」
ゆっくりと並んで歩きながら手を繋いでイズーとヒヨリ。
「今日の外での初デート楽しかったね。イズー、本当にありがとう」
「ええ、そうですね。とても楽しかったです」
ヒヨリは歩きながらイズーをこれでもかと急かす。
「ほらほら行かないと」
「すみません、本当に」
イズーは相変わらず、申し訳なさそうに頭を下げている。
「では、そろそろ行こうと思います」
「うん、気をつけてね」
しかし。
一向にイズーはその場を離れない。
「イズー?」
「ヒヨリさん」
「うん、なあに?」
ふと真っ正面から手を握られて、頬を染めて照れてしまうヒヨリである。
(イズーって本当に真っ直ぐだよね)
そんなことをついつい考えて。赤面し続けてしまう彼女。
そんなことを知ってか知らずかイズーは言葉を熱く続ける。
「ヒヨリさん、あのですね。あの……」
彼は大真面目にヒヨリを見つめてきていて。
何か真剣に言葉を選んでいるようだった。
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