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「リリー……!」
ざあざあと雨は降り続ける。
少女はずぶ濡れになっていた。
長い時間うずくまって泣き続けている体は小さく小刻みに震えているようにも見える。
少女の体が心配だ。
まだ夏とはいえ、こうも長時間雨に打たれていては体も冷える。
その時、キラリと雷鳴が轟いた。
雨が止む気配は、いまだない。
少女は土砂降りの雨の中ずっとずっと泣き続けていた。
「リリー……」
どれほどの時間が経ったのだろうか。
少女は泣きながら呆然と立ち尽くし、じっとしていた。
雨はまだ降り続けている。その激しさは幾分収まったようだったが、まだまだ降り続いているのは間違いない。
「リリー……」
少女はまた、ぽつりとつぶやいた。
何かを考えているのだろうか。目を閉じ口をつむんだ。
頬にはいまだ少女が流した涙が、しっとりと流れている。雨の中でもそれはわかった。
少女は、おもむろに言葉を静かに発する。
「リリーにとって私は、良い飼い主だった……?」
顔をくしゃくしゃにしながら少女はまた号泣する。
見ていられなかった。
少女の名は、ヒヨリという。
顔立ちから察するに、十五、六歳あたりか。
まだまだ幼い感じはするも、その眼差しには何か強い光があるように見えた。
「リリー、リリー……!」
再び、ヒヨリはうずくまる。
彼女はずっと同じことをぐるぐると考えているようだった。
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