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最終章 蟹と帰る
蟹の復讐を終えた俺は、ウマヅラハギヅラブラザーズの死体を処理し、車に乗って家路を辿った。
船の上ということもあって、死体の処理には時間がかかった。バラバラにして、発泡スチロールに入る分は詰め込んで、入らない分は、船に積んであった網にまとめて、海に沈めた。
そのうち、海の生き物たちがキレイ食べてくれるだろう。
車を運転しながら、俺はふと疑問に思っていたことを蟹に尋ねてみた。
「なあ、どうして俺にだけ、おまえの声が聞こえるのかな。それに、『ゆうろーど』でも別の声が聞こえたのはなんだったんだろうか」
(今まで声が聞こえた生き物は、どんなものだったか覚えているかい?)
「蟹だろ。それとニワトリ。あと、たぶんウサギ」
(そうだろうな。それらの共通点が、君にはわかるかい?)
「なんだ?全部が食用ってわけでもないしな。もちろん哺乳類ってわけでもない。さっぱりわからんぜ」
「…いや、待てよ。そういえば、学校で飼っていたウサギが…」
(気づいたか。そうだ。それらは、共食いをする生き物なんだ。つまり、カニバリズムだな)
(多頭飼いすると、ストレスで共食いをしてしまう。弱いものが強いものに食われる。そういう性質をもった生き物なんだ)
(林田。もしかして君も、そうなんじゃないか?私が初めてこの家に来た時、冷凍庫で妙なものを見た。食べるところが少なくて、やたら長いだけの原木。私には人間の手足のように見えた。それに、この持ち帰ったウマヅラハギヅラブラザーズの手や指。どうする気なんだい。友よ、あの浴槽の塊、切るのを手伝おうか。私の自慢のハサミで)
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