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俺は静かに笑った。
記憶の中の胸糞悪いヘラヘラした笑顔の和樹に語りかける。
アイツのことだ、理由のわからないうちに埋められてさぞかし戸惑ったことだろう。
だから教えてやるよ。
なあ和樹、お前はいつも俺に友達なんかいないと思っていただろう?
でもな、たったひとりだけ居たんだよ。
だけど、それはお前じゃない。
王ちゃんだ。
お前のことを友達だと思い込んでいた俺に「一方的に利益を得る関係は友達じゃない」と教えてくれた、あの子だけなんだ。
その優しい友達がろくでなしのお前なんかと付き合い始めた時、俺は酷く落ち込んだ。
やめろと何度も忠告したけれど「好きになる気持ちは自由にならないの」と言われた。
あの子がみすみす不幸になるのを止められなかったんだ。
俺は死んでも涙一つ見せないようなクソ男に恋をした可哀想な友達に、せめてもの餞をしてやりたかった。
だから彼女がどうしても諦められなかったお前という男を、彼女のもとに送り届けたんだ。
墓の下ならもう大好きな女遊びも出来ないだろ。
観念して王ちゃんを幸せにしてやってくれ。
それがお前をこの世から消した理由なんだからよ。
了
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